遺産は、相続税の非課税枠の範囲内で納税額も発生しないので、相続でもめることはない。
そうお考えではないですか?
ところが、そうも言えないのが相続です。
以下の図は、平成29年に家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割事件の遺産総額別の内訳です。
遺産総額1千万円以下が33.1%、1千万円超5千万円以下が44.4%、実に77.5%が遺産総額5千万円以下のケースです。
裁判所 司法統計を再加工
https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/index.html(こちらの司法統計をクリックして下さい)
相続の現場を多く見てきた当事務所では、親の生前は仲が良かったにもかかわらず、いざ遺産分割となると兄弟の間でもめるというケースを多く経験して来ました。
親が生きているうちは、口に出せなかった兄弟・姉妹間の不満が遺産相続の場で噴出することがあります。
「自分はしてもらわなかったけれど、兄さん(姉さん)は、親から○○をしてもらっている」
「自分は、他の兄弟よりも親の面倒を見ていた」等々
これは、遺産の額にかかわらず起こりうることです。
もめるときはもめる。これが相続の現実です。
そして、このような経験は、簡単に修復できず、兄弟・姉妹間の仲違いの原因になってしまうケースがあります。
うちは兄弟仲が良いから大丈夫。お金のことでトラブルになるような育て方はしていない。
そうは思っても、円滑な相続のために配慮をしておくが親の勤めだとも言えます。
親の考え、気持ちを具体的な形で残しておくことをお勧めします。
争族を未然に防ぐための最善の策は遺言書を残しておくことです。
故人の遺志が明確であれば、その内容に多少の不満があっても、相続人として受け入れやすいものです。
相続人それぞれが勝手な主張を繰り広げるより、揉める可能性が少ないものです。
遺言書には、相続人それぞれに、どの財産を残したいのかを具体的に記載しておきます。
さらに遺言書に加え「付言事項」として、相続人それぞれに対する思いを書いた手紙を残すことをお勧めします。
親が相続人に、どの財産を残したいと考えたのかは、それなりの理由があるはずです。
「家業を継いでもらった」「介護してもらった」「他の兄弟の面倒を見ていた」等々、その思いを伝えることで、相続人の理解が得られやすくなります。
親の心のこもった手紙を読めば、納得せざるを得ないというのが人情というものです。